橘木俊詔「格差社会―何が問題なのか」

岩田規久男「「小さな政府」を問いなおす」(→こちら)と異なる立場の主張として。こちらも全体像が整理されており、文章もこなれていて読みやすい。基本的なデータも上がっている。全体を通して目新しい話は少ない。それぐらい基本的ともいえる。本テーマのおさらいとしてお薦め。


格差社会―何が問題なのか (岩波新書)

格差社会―何が問題なのか (岩波新書)


あとがきにあるとおり、(1)格差拡大は進行中、貧困者増大中、(2)日本では経済効率を犠牲にせず、機会と結果の双方において格差是正策を採用可能、(3)格差是正の基本は教育、社会保障、雇用の分野にあり、が主旨。格差に対する倫理的な許容レベルに違いはあれど、結局今後の処方箋自体はあまり変わらないんだよね。岩田本との違いは財源の認識で、岩田が構造改革(による無駄な支出の削減)、リフレ政策で財源確保可能とするのに対して、こちらは国民負担率を上げざるをえないという主張。両者とも、具体的な福祉レベルとそれに必要な財源の大きさ、そしてその捻出方法(具体的な税率含む)について、本文中で詳述していないため、なんとも判断できない。次のステップとして、その辺を突っ込んだ議論が出てくるといいのになぁ、と思う。

参考