暫定税率−民主党が主張する2.7倍の負担格差って本当?

暫定税率廃止の議論が停滞する中、そもそも民主党暫定税率廃止した場合の財政収支への影響をどう考えてるんだっけ?と民主党の主張を確認してみたところ気になる文章が。


道路特定財源制度改革のビジョン」(民主党HP)より
http://www.dpj.or.jp/special/douro_tokutei/index.html

●大都市と地方の負担格差を縮小する
自動車の世帯あたりの保有は、東京都中野区の0.288台に対し、愛知県飛島村では、2.916台と10倍以上もの開きがある。「自動車等の維持に要する1世帯あたりの年間支出(家計調査)」について見ると、“町村”は平成18年年間で約27万8千円支出しているのに対し、“東京都区部”は9万8千円で済み、2.7倍もの開きがある。世帯収入は“町村”456万1千円に対し、“東京都区部”は507万6千円。極めて逆進性が強く、都市と地方の格差が如実に現れている。自動車なしでの生活が不可能な地方住民のことを考えれば、地方における世帯あたりの負担を軽減させ、都市と地方の格差を縮小することができる。公共交通が十分ではない地方において、自動車はまさに生活必需品であることに配慮したものである。


家計調査によると“町村”と“東京都区部”で「自動車等の維持に要する1世帯あたりの年間支出」に2.7倍もの「負担格差」があると。でも都市部では、自動車の代わりに公共交通使ってるわけで、その負担も含めて議論しないと公平じゃないだろ、ってことで公共交通も含めた「交通」支出全体で比較してみました。


「H18家計調査年報*1」によると、鉄道、バス等の利用を含む「交通」支出全体は、“町村”で年間341,879円、“東京都区部”では213,415円。よって「交通」支出全体で比較した場合、1.6倍の「負担格差」があることになります。2.7倍より小さくなったのは、鉄道運賃(通勤、通学を含む)が“町村”で26,219円、“東京都区部”で68,452円と大きな差があることによるもの。まぁ、都民の大部分が満員電車に揺られて日々通勤・通学してることを考えれば当り前ですよね。(その他の内訳はこちら参照


確かに「交通」支出ベースでも世帯あたりで差があります。でも2.7倍と1.6倍では受ける印象が違うのではないでしょうか。意図的に安易な格差論を冗長してるのではと勘繰りたくなります。


なお、当初の疑問である暫定税率廃止した場合の財政収支への影響については、道路行政は無駄が多すぎ、不要な道路計画の見極め、建設・運営コストの引き下げ等の支出カットで対応可能とのことです。妥当性は未確認です。


補足1) 家計調査における支出は、全世帯の平均。“東京都区部”の方が車の保有率が低いことは、民主党自身が説明するように明らかですから、保有世帯あたりの金額を比べると違う結果になるでしょう(仮に自動車購入が同水準とした場合、“東京都区部”が逆に1.3倍の負担大。駐車場賃料の違いが主因)。


補足2) 民主党資料とここで引用した家計調査では、数値が多少異なります(例えば“町村”支出が民主党資料では約27万8千円、家計調査では、291,824円。なお、家計調査には「自動車等維持」という項目があるが、この項目の“町村”の支出は219,678円と小さすぎるため、上記比較では自動車購入等も含む「自動車等関係費」を使用)。ただオーダーとしては同程度であり、上記結果と大きく変わることはないと思われ。


補足3) 「負担格差」以外でも、世帯当たりの保有比較で、なんで東京都中野区と愛知県飛鳥村がピンポイントで指摘されているのか謎。

*1:H18家計調査年報(総世帯)第11表 都市階級・地方・都道府県庁所在市別1世帯当たり年間の品目別支出金額、町村、東京都区部の730〜739交通、740〜759・75X自動車等関係費