魚住昭「官僚とメディア」

長年記者として前線で働く筆者によるメディアの側からのメディア論。実際に自分で取材したいくつかの事件(耐震偽装事件、ライブドア村上ファンド事件、NHK番組改編問題等)を軸に、最終的に公になる記事の裏側にある、官僚とメディア、およびその他のプレイヤー(政治家、広告代理店等)の思惑・やりとりの実態について、現場感ある内容となっている。



当り前であるが、報道というものが、「メディア」「ジャーナリズム」への理想・幻想ありつつも、各プレイヤーのインセンティブ、利害関係(多くの場合、主義・思想といった大げさなものでなく、“小市民的”(=普通)な動機)より生み出されるのだろうなと再認識。


記者というものが、次第に情報源のインナーグループの一員となっていくという件も、現場で素直で真面目にがんばっている人々を思い浮かべれば、そんなもんだろうな、と思う。


結果的に、読者が本当に必要とする情報が報道されないリスクが生じているわけだが、結局のところ、必要な情報(メディア)を読者自ら選別し、対価を払うということをしない代償*1なのだろう。メディアから見た、読者へのバリュー提供のプライオリティが下がっているわけで、読者の自業自得ではなかろうかとも思われる。


他の書評ではbewaardさんのに共感。
http://bewaad.com/2007/04/16/75/
上記、情報源との関係についての記述も引用あり。メディアに対するスタンスは、霞が関の住人たる贔屓目からではなく、現場に近い場所におられるからこそのリアリティゆえ、メディアへの幻想がないからなのだろう、と思いました。

*1:テレビは無料だし、新聞も宅配制度の結果、実質的な競争原理が働きにくい