映画「YASUKUNI」をめぐる騒動は有効に活用すべき

今回の、映画「YASUKUNI」をめぐる騒動の結果、靖国問題南京事件等への関心が再び広く一般に喚起される可能性がある。この関心が、映画の中身の検証などを通じたより正確な歴史認識へ、そして騒動をめぐる各人の言説の検証を通じたメディア・リテラシーの実践へ、有効に活用されることを期待する。現時点では上映中止の是非ばかりが論じられているが、上映された暁には、より本質的な問題である、映画の中身に関して生産的な議論が行われる、んだよね?


映画「YASUKUNI」は、上映、助成金をめぐる騒動により大きな注目を浴びている。怪我の功名。映画はおそらく公開されるだろう。そしてこの騒動の結果、当初想定した以上の人が見に行くだろう。その中にはこの騒動がなければ絶対このような映画を見に行かないような、普段歴史認識の問題にとりわけ関心を持たない人も含まれているに違いない。それにより、靖国南京事件等への関心が再び広く喚起される可能性がある。チベット問題、北京オリンピックなど現在進行中の関連トピックが多いことも追い風になるだろう。


これは、日頃多くの誤解や認識不足、そしてそれに伴う不毛な論争を生んでいる、靖国問題南京事件に係る写真の真偽、南京事件そのものなどについて、より正確な歴史認識の理解を広める良いチャンスである。歴史認識問題へ通常以上の関心が向けられれば、マスメディアで改めて本問題が取り上げられる可能性は高くなる。また、映画を見た人にとっては、映画の検証の形をとることで、より興味深く、具体感をもって理解を進めることができるだろう。


また、騒動になったおかげでたくさん表に出てきた、映画製作に関わった関係者や、上映、助成金問題についての政治家、官僚、マスコミ、ジャーナリストらの立場の異なる発言は是非検証すべきである。誰がどれだけ(場合によってはある思想的偏向に基づいて)いいかげんな発言をしているのかは明らかにすべきであり、それは一般の人のメディア・リテラシー向上のための魅力的な素材になるだろう。現時点でも助成金問題に関して稲田議員と朝日新聞の意見は真っ向対立しているようだし、映画のキャストとしてクレジットされている刀匠が事前に説明されていたのとは異なる文脈で映像が使われたことに対し製作者に抗議していたりと、相反する発言が散見される。


今回おもしろいと思うのは、動画投稿サイトのおかげで、一般の人でも確認できる一次情報が増えていることだ。また、東京では放送されないような、つっこんだ議論がなされた関西系の番組も随分見ることが簡単になった。一般の人でも何が正しいのかを自身で検証する余地が広がっている。そして、それは同時にマスメディアのいい加減な報道へのけん制となっていくのだろう。

有村治子議員(自民党)質問 2008年3月27日(木) 参議院・内閣委員会

日本芸術文化振興会助成金が適正に執行されたかどうかについて、文科省担当者へ質問してます。助成基準にある政治性の有無についてなど。

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映画「靖国YASUKUNI」協力者トム岸田氏に聞く

映画製作者の「刀匠の伝統についてのドキュメンタリーを作りたい」との申し出を受け、靖国刀刀匠の刈谷直治氏を紹介した岸田氏へのインタビュー。いきさつや完成した映画を見ての心境など。

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